我が儘が言えるなら、もう少しで良いから。



尚のぬくもりを感じていたい。



そう思ってしまった。



誰か……あたしの我が儘を聞いてくれるなら、どうか1秒でも長く尚の傍にいさせてください。



そう思いながらあたしは静かに尚の胸に頭を寄せた。



尚の鼓動が聞こえてくる。



「尚……?」



「ん?」



目を瞑っているから尚がどんな表情をしているのかは分からない。



でもきっと……、眉を片方上げてるんだろうな。



そんな事を想像しながらあたしは言葉を続ける。



「ありがとね……助けてくれて」



「あぁ」



頬をから響いてくる尚の心地よい低い声に安心する。



「す……」



思わず“好き”って言ってしまいそうだった。



でも言えない。



言っちゃいけない。