「歩けるから降ろしてよ」



はっきり言って歩ける自信はなかったけど、強がりを言ってしまうあたし。



すると尚はいつもの無表情に戻ってあたしを見下ろしながら言った。



「いいから。黙ってお前は抱っこされてろ」



強い言葉にあたしは心臓をドキッとさせてしまう。



すると後ろから渡里君が走ってきた。



「美麗ちゃん!大丈夫だった!?」



さっきの怖い表情とは一転。渡里君は泣きそうな表情であたしの顔を見つめてくる。



「うん……大丈夫」



抱っこされている事は大丈夫じゃないって言える訳ないよね。



あたしは言葉を押し殺して渡里君に微笑みかけた。



すると尚は渡里君に視線を向けて口を開いた。



「こいつ……歩けないみたいだから俺が送ってく。お前等は佑騎を頼む」



「分かった……じゃぁ尚。美麗ちゃんを頼んだよ?」



その時渡里君の表情が切なく見えた。



渡里君……。



尚は静かに頷いて歩き出したからあたしは何も言わずに黙って目を閉じた。



渡里君の気持ちは分かってる。



でも……。