「いいよ」



佑騎はそう呟いて話し始めた。



「おれん家さ……母子家庭なんだ。んでおれの上に姉貴が居て3人暮らし。母親も昔からそんなに真面目でもなかったから、おれも姉貴も自由だった。そのせいで姉貴もおれも荒れちまった。でも母親は何も言わなかった」



「……うん」



「そしたら姉貴はそれをいい事に薬に手を出したんだ。毎日毎日、部屋からは何かが割れる音とか、物が床に落ちる音が家に響き渡ってた。薬を買う金がなくなると、姉貴は売春とかいろいろやるようになって……。それでも金が手に入らない時は、おれと母親に暴力振るうようになった。おれだってそんなの止める力はあったけど、でも姉貴を止める勇気はなかったんだ。しばらくしてから母親も変わり始めた。その時分かったんだ。母親も薬やってるって」



佑騎の声が震えてる。



「そしたら母親もおれに暴力振るうようになってさ。おれホントにどうしたらいいのか分かんなくなってさ。家に帰らなくなったんだ。でも……久しぶりに帰った家を見ておれは固まった。たくさんのパトカーが家の周りに止まってたんだ。そう……薬バレて2人は捕まった」



佑騎にはそんな過去があったんだ。



すると困ったように佑騎は笑った。



「馬鹿だなおれ……母親と姉貴が怖くて女嫌いになるなんてな」



「そんな事ないよ!」



気付いたらあたしは立ち上がって佑騎を見下ろしていた。



「美麗……?」



「馬鹿じゃないよ!家族に裏切られたら誰だって怖くなるよ!女嫌いにもなるよ!だから……そうやって自分1人で背負うのやめなよ」