「オレね。中学の時付き合ってた女の子が居たんだ。でも……その頃オレ荒れててね?その子にも冷たく当たって彼女に酷い事してた。それでもその子はオレの傍に居た。何で傍に居るのか分かんなくていっつも突き放してた」
そこで、渡里君は話すのを止めた。
そんな渡里君を見てあたしは優しく微笑む。
「無理して……話さなくていいんだよ?」
「ううん……。話したいんだ。それでね?ある日他校の奴と喧嘩したんだ。それを知った彼女はオレに“もう喧嘩しないで”って言った。でも……心を閉じてたオレには彼女の心配の声なんて届かなかった。また突き放してオレは歩き出した。信号無視して横断歩道渡って……オレが渡りきった時。後ろで衝突音が聞こえたんだ」
渡里君の声が震えている。
「オレを追いかけてきた彼女が車に引かれた。今でも覚えてる。あの日の光景を……。彼女はその事故のせいで、歩けなくなった。オレが自由を奪ってしまったんだ」
気が付いたらあたしは渡里君を抱きしめてた。
ただ……今にも壊れてしまいそうな渡里君を、受け止めてあげたくて。
「美麗ちゃん……」
「泣いていいんだよ?辛い時は泣いていいんだよ?」
男だから泣かないなんて変なプライドはいらない。
辛い時は、悲しい時は泣くのが人間ってものでしょ?
すると渡里君は声を殺して泣き出した。
「だからオレ……あいつの傍であいつを守ってあげなきゃいけないんだ。あの頃してやれなかった事を……」