「あれ?見ない顔だな。誰かの女??」
何かを企んだような笑みを見せながらあたしを見る。
その気持ち悪い笑みに悪寒がする。
……気持ち悪い。
すると、尚はさっきとは比べ物にならない表情を見せた。
吸い込まれそうな茶色の瞳はくすんで死んでいる。
低かった声はさらに低くなり、その声を聞くだけで恐怖を感じる。
もともと怯んでしまう位だった威圧感はさらに大きくなった。
これが……本当の尚なの?
これが……鈴蘭のトップなの?
まるで……獲物を狙う狼の様。
「俺の前に現れたって事は死ぬ覚悟できたんだよな?」
そう言った瞬間。
あたしは尚を見失った。
ボコッ。
気付いたら鈍い音がして、目の前には苦しそうに蹲る3年の男とその前に立っている尚の姿があった。
……速い。