琴葉が死んで……。
俺は琴葉以外を好きになろうとはしなかった。
それは、何かと目立ってしまう自分のせいで、やっかみや僻みで自分ならまだしも好きな奴を傷つけられる事が嫌だったから。
男は好きな女を自分の手で守りたい生き物だ。
だから……。
守れないって場合が恐かったんだ。
でも今思えば、守る事が恐いって逃げてたのかもしれない。
餓鬼だった俺は、好きな女を守りたいと思った。
でもいざって時に、守る事ができなかった。
それは“守る”って事に憧れを抱いた。
ただ……。
それだけだったんだ。
空想だけ抱いて、現実を見てなかったんだ。
甘さだけ抱いて、厳しさから逃げてたんだ。
そんな世間知らずの俺にのしかかってきた現実の厳しさ。
守る事の難しさを痛いくらい思い知らされて。
俺は“逃げる”って道を選んでしまった。
だから……、無力で人を傷つけるなら、人と関わらない。
人と関わらなければ、守る事をしないで済む。
そう思った。