すると阿山さんは煙草を銜えて火をつけた。
「あいつは……すごい奴だよ」
煙草をふかして呟く。
「はっきり言って……桐生の女の言葉は効きました」
あいつの言葉は妙に心に響いた。
すると阿山さんは満足そうに微笑んだ。
あぁ……この人のこんな表情を見たのはいつ以来だろう。
いつも眉間に皺を寄せて無表情。
それは琴羽が死んでからいつもの表情だった。
「美麗は……尚にしか扱えないし。尚は美麗にしか扱えねぇな」
その表情はまるで尚の兄貴みたいな表情だった。
あいつ等は出会うべき2人だったんだな。
あれをホントに運命の人っていうんだろう。
ってこんなくさい事言うなんて……おれ、どうかしてんな。
今度は桐生とは、もっといい事で勝負してぇな。
なんて……思った。