「もしかして……あなたが尚?」
あなたが……みんなから恐れられる“尚”なの?
あなたが……鈴蘭のトップの“尚”なの?
そう聞いてみると、男は“ん?”って顔をして口を開いた。
「渡里に聞いたのか?」
「……はい」
あたしが敬語で話すなんてどうかしてる。
でも、この人の威圧感が凄すぎて。
敬語で話さずにはいられなかった。
「そうだよ。俺が桐生尚だ」
この人が……あの“尚”。
納得してしまった。
だってこの人の全てが……特別に見えるから。
オーラも容姿も。
誰にも手に入れることの出来ないものを持っている気がした。
ガラ。
「あぁ!尚ここに居たのかよ!?」
突然教室の扉が開かれて聞き覚えのある声が聞こえてきた。
この声……。
振り返ってみると、やっぱり……成月だ。
「って、何で馬鹿力女が居んだよ?」