尚 Side



「馬ー鹿。それはおれの台詞だよ。糞が」



廊下を歩いていると、さっきまでいた教室からそう小さく聞こえてきた。



その声を聞いて俺はフッと笑った。



長かった。



琴羽への想いに決着をつけるのに……時間がかかった。



すると廊下のロッカーに寄りかかる凛を見つけた。



あっちも俺の存在に気が付くと、俺の方に体勢を変えた。



「……江連とは話ついたのか?」



「……あぁ」



そう返事をすると、凛は遠くを見つめた。



いつ以来だろう。



幼馴染でいつも一緒にいたこいつと顔も合わせなければ、言葉も交わらせる事もなくなったのは。



すると凛は口を開いた。



「さっきも言ったけど、俺はお前を恨んじゃいねぇ」



「……」



「むしろ感謝してる」