視線を逸らす事ができないまま見つめていると、あたしの視線に気付いた男がこっちを向いた。
やばっ。
そう思った時にはもう遅く、ばっちり目が合ってしまった。
「……お前、見ない顔だな。転校生か?」
その声は心地よい低い声だった。
え?
あたしに話しかけてるの!?
あ……何て答えたらいいんだろう。
「あ……そうですけど」
少し声が震えた。
だって、男が少しずつあたしに近寄ってくるから。
細身の身体で身長は高い。
180㎝はありそうだ。
その綺麗過ぎる容姿と他の人とは違う雰囲気とやらに、あたしは圧倒されてしまった。
「ふぅん……お前が、渡里達が言ってた美麗?」
“美麗”。
呼んでくれたその声が心地よくてもっと呼んでほしいって不覚にも思ってしまった。
って……渡里君に聞いたって事は……。
平気で渡里君達を呼び捨てにするって事は……。
もしかして……。
この人が“尚”??