でも今日……。
俺は桐生の拳によって。
阿山さんの言葉によって。
目が覚めた。
「桐生……」
寝転がりながら俺は桐生を呼んだ。
「ん?」
そう返事をくれる桐生におれは独り言のように呟いた。
「悪かったな……」
お前を恨んで、琴羽を憎んで。
「お前への恨みは、琴羽へ変わって……おれ、かなり歪んでたよな」
なのに、桐生は何も言わずにおれを見ていた。
おれはあんなに卑怯な手を使ってたのに。
「お前の女が言ってた“卑怯な手使ったってあんたは尚には勝てない”って言葉。すげー身に染みたわ」
そう言うと、一瞬眉を上げた桐生はフッと笑った。
「……そうか」