「おい、美麗」



低くて甘い声があたしを呼ぶ。



心臓バクバクいってて、顔も真っ赤でとてもじゃないけど、尚にこんな顔見せられない。



すると、人の気も知らないで尚は無理やり向き合うようにあたしを振り向かせた。



!?



驚いて目を見開いていると、尚はフッと笑う。



「何赤くなってんだよ」


そう言って余裕の笑み。



悔しいっ悔しい!!



何でこんなに余裕なの!?


あたしはこんなに精一杯なのに!!



「ズルいよ。尚は」



「ん?」



「あたしはこんなに心臓壊れそうなくらいドキドキしてるのに……」



あたしばっかりな気がして。



するといきなり尚があたしに覆い被さってきた。



「え?尚?」



「俺だっていっぱいいっぱいだっちゅーの」



「え?」