「あたし尚の所に行って来る」
やっと泣き止んだあたしは、椅子に座っている渡里君にそう言った。
渡里君は満面の笑みであたしを見送ってくれた。
何ができるとか、言えるとかじゃないけど。
今すごく尚に会いたかった。
教室に戻ると、尚はいなくて、あたしはまた屋上に向かった。
屋上を見渡すと、尚が煙草を吸っていた。
「尚!」
大声で名前を呼ぶと、尚はゆっくりと後ろを振り返る。
「美麗?」
「尚!……あたし、全部聞いたっ。琴羽さんの事……凛の事!!」
その2人の名前をあたしの口から出てきた事に驚いたのか、尚は目を見開いた。
「おまっ……何でそれ」
「尚!あたしね?凛に会った事があるの。公園で泣いてた時、あの人はあたしに勇気をくれたの。その時凛は、“おれみたいになるなよ”って言ってた。きっと……尚の事気にしてるんだよ!」
やっと分かったの。
あの時どうして尚と凛の表情が重なったのか。