すると渡里君は困ったような顔をしながら、指であたしの涙をすくった。
「ありがとう」
優しい微笑で、優しい声で、渡里君はあたしを見下ろした。
「……へ?」
あたし……渡里君にお礼を言われるような事してないよ?
逆に気持ちに答えられなかったし。
あたしが謝らなきゃいけない筈なのに。
そう思いながら渡里君を見ると、フッと笑う。
「尚は琴羽が死んでから、約2年……女に興味を示さなかった。なのに、今本気で美麗ちゃんを好きなんだ、尚は。オレが言っちゃなんだけど、尚は……本気で美麗ちゃんに惚れてるよ。琴羽なんて比べ物にならないくらいに」
悲しい筈なのに。
渡里君の言葉が嬉しくて、また涙が溢れる。
「ほんっとに?あたしっ……尚の為にいられてるかな?」
「うん」
そう言って渡里君は頷く。