渡里 Side
少し気持ちが落ち着いて銜えたままの煙草に火をつけようとした。
すると、後ろから声をかけられた。
「案外……渡里さんって軽い人だったんですね」
その声の主が誰だか分かると、オレはゆっくり振り返った。
「随分言うようになったね、佑騎」
笑顔を作りながらそう言うと、佑騎はオレの前に歩み寄ってくる。
「おれはただ思った事を言ってるまでです」
そう言ってオレを見つめる佑騎にオレは溜息をつきながら言った。
「オレは……好きだからこそ。あいての幸せを願ったんだよ」
「それってただの言い訳でしょ?」
…………。
その言葉を聞いて、オレは眉間に皺を寄せた。
「尚さんに勝てないから……自分に自信がないから、傷つく前に引こうって……魂胆でしょ?」
こいつは何も分かってない。
オレは1度佑騎を睨みつけて呟く。
「お前にも分かるよ。ホントに大切な事が」
そう言ってオレは屋上を出ようとした。