渡里 Side
美麗ちゃんが屋上を出て行って、オレは1人で手すりに寄りかかりながらポケットに手を突っ込む。
ポケットから煙草を取って1本取り出す。
口に銜えてオレは煙草に火をつけようとした。
「……」
不意に……オレの目頭が熱くなるのが分かった。
やっぱり、勝てなかった。
昔から……尚は、他の人にはないオーラを放っていて。
他の人にはない魅力と自信があった。
昔から……誰1人として尚に逆らおうなんて奴はいなかった。
会った頃はみんな同じ立場だったはずなのに……。
気付いたら尚は、オレの手も届かない存在になってたな。
それはあの成月だってそうだった。
それは多分……。あの日から……。