フッと眉を下げて微笑む。
「できなかった」
渡里君はあたしから視線を逸らして続ける。
「美麗ちゃんの日に日に強くなる尚への想いと、日に日に美麗ちゃんへの想いが強くなる尚見て……オレってホントに尚に敵わないんだなって思ってさ。だから美麗ちゃんに手出せなかった」
「渡里君……」
「美麗ちゃんは尚を選んだ。それは尚となら幸せになれるって思ったからなんだよね?」
尚となら……。
「うん」
その返事を聞いて渡里君は微笑んだ。
「それならいいや。オレは美麗ちゃんの幸せを願いたい。美麗ちゃんの幸せが尚ならオレは何も言わない」
渡里君……ホントに優しいね。
「……ありがとう」
「オレこそありがとう。叶わなかったけど、オレ美麗ちゃんを好きになってよかった」
そう言って渡里君は優しい笑顔を見せてくれた。
「ちょっとオレ煙草吸いたいから残るね。美麗ちゃんは先教室戻ってて」
「うん」
頷いてあたしに背を向ける渡里君をチラッと見て、あたしはその後ろ姿に背を向けた。