そう伝えると、渡里君は少し寂しそうに笑った。
2人で屋上に向かう。
さっきの寂しげな笑みが頭から離れない。
渡里君は分かっているのかな。
あたしが何を伝えようとしてるのか。
屋上に着くと、夏が近づいているからだろうか……。
温かい風が吹く。
手すりに手を伸ばして風に身を任せると、渡里君が口を開いた。
「話って何?」
その声を聞いてあたしは真剣な表情で渡里君を見上げた。
「渡里君……あたしね?尚を選ぶ」
沈黙があたし達を包む。
「だからごめん……渡里君の気持ちには答えられない」
そう伝えると、渡里君はしばらくして切なげに笑った。
「分かってた。初めから」
「え?」
「美麗ちゃんが、尚を好きだって事」
やっぱり……。
「でもオレ本気で尚から奪おうとした。でも……」