溜息が聞こえてきたかと思ったら、尚は優しくあたしを抱きしめてくれた。



トクントクン……って尚の心地よい音が聞こえてくる。



「んとに……お前馬鹿だな」



その声はやっぱり呆れてて、あたしは顔を上げた。



「お前を好きだって言ったのに、何で他の奴と付き合わなきゃなんねぇんだよ」



その顔は不機嫌そのもので。



あたしのおでこをパチッて叩いた。



「痛っ」



痛みが走ったおでこを押さえながら、あたしは尚を見上げる。



「だって!……次の日にはいつもと変わんなかったから……夢だったんじゃないかって不安だったんだもん」



ホントに不安だったんだもん。



また涙が溢れてきてそれを拭おうとしたら尚の指が先に拭ってくれた。



「お前は……渡里と佑騎に告られただろ?その返事もまだしてないのに、付き合うのどうかと思ったんだよ。それにお前の2人の返事するのに時間が必要かと思ったんだよ」



あたしの事……考えてくれてたんだ。



なのにあたしは自分の事ばっかり……。



関係が崩れる事を恐れてるのは、尚だって同じなのに。