結局……聞けなかった。



はぁ……っと溜息をつきながら、あたしは1人で廊下を歩く。



ふとポケットに手を突っ込んでみると、ポケットの中に紙切れを見つけた。



……これ。



「あの時……凛って人が渡してきたんだっけ」



初対面なのに、泣き顔なんて見せて恥ずかしい事しちゃったな。



あの時あの人私服だったけど、学生なのかな?



高校生には見えなかったけど。



ボーっと電話番号とアドレスが書いてある紙を見つめる。



すると前から声をかけられた。



「美麗ちゃん」



その声に前を向くと、笑顔の渡里君が立っていた。



「あ……渡里君」



咄嗟にあたしは持っていた紙切れをポケットにしまった。



そして笑顔を見せると、渡里君は少しずつあたしに近づいて来た。



「何してたの?」



「あ、ううん。何にもしてないよ」