「美麗、か」
そうあたしの名前を呼ぶと、あたしに小さな紙切れを渡してきた。
何、この紙……。
疑問を持ちながらその紙切れを受け取ると、満足そうに凛はあたしの頭を乱暴に撫でた。
「何かあったら連絡しろよ」
それだけを言うと凛はあたしの返事を聞かずに去って行ってしまった。
凛が去って行くと、また涙が出てきた。
駄目だ……あの後姿を思い出してしまう。
「ぐす……」
涙を拭っていると、後ろから大声であたしの名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「美麗ちゃーん!!!」
渡里君の声に、あたしは慌てて涙を拭った。
するとすぐにあたしの姿を見つけた渡里君は、ホッとしたようにあたしを見て微笑んだ。
「よかった……いきなり走ってっちゃってびっくりしたよ」
そう言って俯いているあたしの前で立ち止まった。
駄目……泣いてた事ばれちゃう。
あたしは何も言わずに俯いていた。
するとそんなあたしのいつもと違う反応に気付いた渡里君はあたしの顔を覗き込んできた。