尚……。尚……。
恋がこんなに苦しいなんて。
人を好きになる事がこんなに辛いなんて。
知らなかった。
「……っうっく」
しゃがみ込んだまま止まらない涙を必死で拭っていると、後ろから声をかけられた。
「何泣いてんだ?」
その声に振り返ると、銀色の髪の長身の男が立っていた。
銀色の髪は長めで、右側の髪は編みこまれている。
185ありそうな身長と鋭い目つきは、とても威圧感があった。
「だれ……?」
溢れる涙を隠しながら聞くと、男はあたしの前にしゃがみ込んであたしの顔を上げさせると溢れる涙を指で拭った。
「俺は阿山凛だ。……お前は?」
その低い声はどこか恐怖心を仰いだ。
「あたしは……美麗」
そう名乗ると、凛という男はフッと笑ってあたしの涙を再び拭った。