無我夢中で走った。
ただただ走った。
息が苦しい。
胸が張り裂けそうだった。
尚……。尚には彼女がいたんだ。
あの時……見た事もない優しい笑顔をしてた。
あたしの知らない尚がいた。
見たくなかった光景に、あたしの目からは涙が溢れた。
止まらない涙に立ち止まって、あたしは崩れるようにその場にしゃがみ込んだ。
胸が苦しい。
もうこのまま肺でも破れて呼吸困難で死んでしまいたい。
そんな事思ってしまう。
辛い。
悲しい。
苦しい。
尚に彼女がいる事知ってたら。
尚があたしを見ていない事をちゃんと自覚してたら。
尚の事好きにならなかったのに。
大切な人がいるなら、優しくなんてしないでよ!!
「うっ……、なっ……おぉ」