“あれ尚じゃない?”



そう聞こうとした瞬間。



あたしの時間は止まった。



スタスタと歩く尚の隣に小走りに駆け寄る綺麗な女の人。



その女の人はごく自然に尚の腕に細い腕を回した。



……嘘。



綺麗で長い茶色の髪。


身長も高くて、スタイルがいい。


見た目では尚より年上に見える。



仲が良さそうに歩く2人があまりにもお似合いで、あたしは体の血がサーッと引いていくのが分かった。



すると立ち止まっているあたしに気付いた渡里君はあたしの元に歩み寄って心配そうに聞いてきた。



「美麗ちゃん?大丈夫?顔、真っ青だよ?」



その言葉にあたしは放心状態で答えた。



「ごめん……あたし……、帰る」



後ずさりで逃げるように何歩か進んであたしは振り返って走った。



「美麗ちゃん!!?」



大きな渡里君の声があたしを呼んでいる。



その時少し振り返った時、尚がその声に振り返った。



「……美麗?」



そう……あたしの姿を見つけた尚があたしの名前を口にした……気がした。