歌い終わって、優華さんを見詰めながら声をかけてみる。…優華さんはというと、呆然と立ち尽くしてる。珍しい…あの爽やかな優華さんが。もしかしてあたし下手だった!?…ぅわぁ、御免なさい;未熟者でした!スイマセン!


「あ、御免ね?…感動しちゃって」


夜なので暗いから気づかなかったけど…。よく見ると優華さん頬には、ナミダがつたっていた。…って!…か、感動?!私の歌にぃ?ぅわぁ、ぅわぁ、ぅわぁあ♪


「有難う御座います!」


私は思わず頭を深々と下げていた。感謝の気持ちをこれくらいでしか表せれなかったから。本当は土下座したいくらいなんだけど…流石に此処コンクリートだから痛いしね。変質者だって思われたらたまったもんじゃないし。


「私ね、最近彼氏と別れたの…」

「ぇえっ!!」


無意識に声をあげていた。何か…冷静さが一瞬吹き飛んだカンジ。優華さんは凄く凄くモテそうなくらい美人で…でも、男の人には興味なくてっていうイメージがあったのに…。まさか、彼氏がいたなんて。しかも、別れた?!…どういうこっちゃぁ!!


「凄く優しくて、この人と一生一緒にいたいって思ってたの。でも…」



優華さんの言葉はそこで途切れて、瞳から水の雫が溢れ出す…。あぁ、優華さんその人のこと本当に…本当に好きだったんだね。大好きだったんだね。愛してたんだね…。



「今でも好きよ。彼のこと…」

「え」

「ヨリを取り戻したかった。あの人が他の女の目に映るのが許せなかった…。ふふっ、笑っちゃうでしょ?…私ね、私の中にこんな私がいるなんて彼を好きになってはじめて知ったわ。でもね、今魅那月さんの歌を聞いて…」


あぁ…この人は強いや。フラれたばっかなのに…。強いや。私なんかより、数倍。いや…数百倍。自分の中に悪がいることを嫌がる人はいっぱい居る。ソレを見て見ないフリする人も。私はそんな人が嫌いで、そんな人から逃げるために此処に居る…。優華さんは悪を認めてる。自分の中の悪を。凄い、ほんとに強いや…。


「月さん・・・魅那月さんっ」


「え?」

「大丈夫? ぼーっとしてたみたいよ?」


どうやら私は優華さんの声も聞こえないほど、呆然と立ち尽くしていたらしい。