「落ち着いて、葵。大丈夫??もうすぐあたしバイト終わるから、駅の前でまってて!!分かった??」


「ごめ…んね那奈。今日は野口くんとデートなのに…。」

「ああっ!!もうそんなのいつでもいいんだからっ!!じゃ、待っててね??」



ツーツーと携帯がなって
耳から離すのも忘れていた。

ぐすっと鼻をならすと
またじんわりと涙が溢れてきた。


那奈のバイト先の最寄り駅の花壇に腰かけて
改札を見ていると
自分は今独りぼっちなんだと強く思ってしまう。



「ねぇ君、大丈夫??」

知らない声に顔をあげると
20歳前後の男の人が
心配そうにあたしの顔を
覗いていた。


「あ、だ大丈夫です。」


慌てて立ち上がったので
その人にぶつかりそうになってしまった。


「良かった。体調悪いんじゃないかなって。」

「すみません…。」


「うん。いや制服が、俺の母校だったから。」


「ありがとうございます。」


頭を下げたらいきなり
手をつかまれたので
ビックリして顔をあげると
彼はあたしではなく
あたしの後方を凝視していた。


「あ、じゃあ。」



慌てて振り向くと
学ランの金ボタンが
目に飛び込んだ。