駅の階段をかけあがった時
もう後戻りはできないんだと
心底思い知った。
震える唇を
指で押さえると
涙が溢れた。


彼の顔が
焼き付いて消えない。



辛いよ。苦しい。

あたしは、悔しい。
悔しい悔しい悔しい。


何ヵ月も愁斗の隣にいたのに
愁斗が一番大切にしている物には
少しも触れられなかった。

あたしは蚊帳の外だった。
どうしてなぜなの。

あたしには理解できない事なの??

あたしじゃダメだった??
頼りにならなかった??
信じていなかったの??



……あの人じゃなきゃならないの???




ただの一度でも
あたしに頼ろうと思わ………。



ああ……






彼は幾度となく


あたしに頼ろうとしていた。




気付いていないのは

あたしだ。




あの雨の日だって。



馬鹿な事をした。




一言いえばよかったんだ。





「なにか、あったの??」



ホームに来た電車の窓に写る自分は
ひどく醜くみえた。