「何で彩が自分を責めてるんだよ…悪いのは…。」


ずっと反らされなかった
亀井の痛いほどの視線が
俺の後ろに移った。


花屋の曲がり角に立つ
葵が目に飛び込んできて
亀井の腕を掴む左手を離しす。



「……どうして。」


花を持つ右手が
ピクリと動いた。



だめだ、葵。
来ちゃだめだ。
俺に、近付くな。


今、俺は俺じゃない。
愁斗じゃない。




「……しゅうと。」


愛しい声が
震えている。


5m先にいる彼女の
瞼が静かに下がるのが分かった。



「どうして…そんな顔するの……。
あたし知ってるの。
何かがある事、愁斗をそんなにも苦しめる何かがある事。
気付いてないと思った??
……ずっと気になってた。付き合う前から。」




付き合う前から
ってた??



泣いている葵なんて
見たくないはずなのに
目が離せない。

ずっと支えてくれた人を
俺は傷付けた。

また一人傷付けてしまった。



大切な人を