横を歩く彼女を見ると
思ったより強い眼差しをしていた。

「あたしね、信じてるの。」

「うん。」


「いつもね、笑顔でいたいから、不安要素は無くしておきたい。」

彼女だって弱いんだ。
そう気付いたのは
横で再びうつむき涙を浮かべるのを
みたときだった。
でも、と続ける。


「おかしいよ愁斗。夏休みに会っても心ここにあらずって感じで。それにあの日も…。愁斗に何があったんだろう。あたし怖いの。」

いよいよ言葉を詰まらせ
鼻をすする彼女の痛みは
ここ何日間の思いではないんだろう。

アイツは何をしてるんだろう。
この子をなぜ
不安にさせるんだろう。

通りすぎた花屋から
媚びるような匂いがして
俺の苛立ちに拍車をかけた。


「でも知りたい。何が愁斗をそんな風にさせてるのか。あたしにだって、出来ることあるはずな……。」


突然足を止めた彼女に
かける言葉などあるはずもなく
自分の靴を見ていた。


「……どうして…。」


消え入りそうな彼女の声で我にかえり
顔をあげると
真っ直ぐ前を見る横顔が
涙で濡れている。



彼女の視線を追いかけて
二人を見たとき
俺がずっと抱え続けてきた
心の爆弾のようなものが
音もなく弾けた。