「こんちは~。」
「あ、いらっしゃい。」

この間来た時よりも
花の香りがやんわりしているように感じる。
花の色も淡くなった気がする。
落ち着いている証拠だ。


「お知り合い入院長いのねぇ。今日はどんなのがいいかしらね。」

そう言いながら落ち着いた色の花に手を伸ばす
店主の背中を見ていると
後ろでドアが開く音がした。

「いらっしゃい。」

「こんにちは。これから病院??」

「うん。そっちは?」
「あたしもこれから。昨日行ったんだけど寝てて話せなかったから。」

「そっか。」


沈黙が流れる前に
店主が花を綺麗にくるんで持ってきた。

「どうかしら。少しだけ明るめにしてみたけど。あんまり明るすぎると男の子が持って歩くの恥ずかしいでしょ??」

「あ、どーも。」

花を受けとると
やっぱり前回と変わらないぐらい
少ししつこすぎるぐらいの香りがする。

「いいにおい。」

隣でそう呟いた亀井は
やはり女なんだと思った。
二人で一緒に店を出た。



「随分辛気くさい顔して会いに行くんだね。」

「そんなウキウキして会いに行く所でもないだろ。」

駅のホームが見えてきた。

あ、電車行っちゃったし。
ふぅとため息をつくと
勘違いしたのか
亀井がつっかかってきた。


「なんで会うの??」

「は?」

さっき答えをだせなかった自らの問いを
再び持ち出されて
思ったよりも不機嫌な声が出てしまった。

彼女がいきなり足を止める。
「どうして?なぜ会いに行くの?罪悪感?責任感?あんた彩がどんな思いで過ごしてるかわかる??」


どんな思いで彩が…??


「もういい。」

再び歩き出した彼女の腕を
とっさに掴んだ。

その体勢がしばらく続く。

「何で彩が自分を責めてるんだよ…悪いのは…。」