「おばさんが言ってたんだけど…その記憶って言うのも曖昧な物で。内容はすっかり抜けてるの。だから周りの人に昔の事を聞いても、分からないの。だけどその時の気持ちの…色とか、強く感じた事が 雰囲気みたいな感じで残ってるらしくって。」




つまり彼女にとって
俺はブルーであると言うことか。



「そっか…。」



静かな廊下に
チャイムが鳴り響いた。



「じゃあ。」

「うん。」




誰も知らない過去。
そして唯一
悲しみを分かち合えるのも
彼女だけだ。



そして唯一
葵には出来ないこと。
こんな思いは知らなくて良い。


何も言わずに
ただそばに居てくれる。
葵にしかできないこと。






パタパタと近づく足音。



「高橋!!」