ようやくミーティングが終わり
競技場を出ようとした所で
携帯が鳴った。


【今日はお疲れ様!すごくカッコよかったよ~!家着いたらメールしてね?葵】


ペコペコと携帯を打ちながら
駅へと向かう。
チラと横を見ると
啓哉が真っ青な顔をしている。


「…お前熱あるべ。」

「あ~うん。おそらく。」


まじで辛そうだし…。
大丈夫かよ。


「しんどい?」

「まあ余裕。」



…つーか色々
しんどいんだろーな。



「アタシのラブパワーで治してあげるわッ!!」

「…気持ちわりぃ~。つーか俺にもラブを分けろや~。」

二人目があう。
先に目を反らしたのは俺だった。


「そりゃ無理なご相談だな。」


「へいへい。あ~だりぃ~。」



改札機を通りながら
前にいる啓哉に
言ってみる。
きっと啓哉ははぐらかす。
「馴れない事すっからだよ。」


数秒たって
ようやく啓哉が振り向く。

「最近モテないんだよね僕。なぜかしらね。」


そう言った啓哉の顔が
やけに挑発的で
心がザワつく。


「恋してるからじゃん?」
通過電車が過ぎた後の静けさが
俺たちの間の空気を
切り裂く。



「……あ~…だからか。」



しばらく目を伏せていた
啓哉が俺をキリリと
見据えて答えた。