五限が終わり、六限は音楽室へ移動だ。

準備をしていると、幸恵ちゃんが話があると一緒に行こうと言ってきた。

あすちゃんは百合ちゃんと話しているから、大丈夫かな?

あすちゃんに先行ってるね~と声をかけて教室をでる。

音楽室に向かって歩く。

渡り廊下を抜けて、階段を登る。

なかなか幸恵ちゃんは話し出さない・・・

もうすぐついちゃうよ?

言い出しにくいのかな・・・

美月がそっと声をかける。

「幸恵ちゃん、どうしたの?」

「うん・・・。」

まだ授業まで5分くらいある。

廊下の端の目立たないところに幸恵ちゃんを促すと、美月の目をじっと見つめて幸恵ちゃんが話し出した。

「あのね、渋井から好きな人を聞いたら教えてほしいの。」

「えぇっ!?いくら幸恵ちゃんでもそれは無理だよー。でも、どうして?」

幸恵ちゃんの切羽詰った表情に、何かを感じる。

普段そんなこと言う子じゃないしな・・・

「私、渋井が好きなの。だから知りたいの。」

幸恵ちゃんは大きな目に強い意志をこめてそう言った。