「あすちゃん…」

「ごめ…」

泣かないように深呼吸しているあすちゃんは、見ていて痛々しかった。

「あすちゃん…無理しないで…泣いてもいいんだよ?」

背中を撫でながらそっと言うと、弱々しく笑って「ありがとう」とあすちゃんが答えた。

「正直言ってね、告白されたとき嬉しかった。でも百合の顔を思い浮かべたのも事実なの。」

「うん…」

「でもやっぱりまだ自分の気持ちがよくわからないから、待ってて。って言ったの。矢口先輩もてるから、あたしの気持ちが定まるまで待てるかわかんないけど」

そう言って笑うあすちゃんはすごく綺麗だった。

頬には涙のあとがあり、鼻は赤かったけど、こんな顔を見せられたら、男の子は抱き締めたくなるんだろうなって思う。

「あたし達はいつでもあすちゃんの味方だよ!」

幸恵ちゃんが優しく微笑みながら言う。

「そうだよ!いつだってあすちゃんの味方なんだから」

美月がもらい泣きしながら言う。

「このことは三人の秘密ね」

そう言って、小指をからめて約束をした。

見つめあい思わず吹き出すと、予鈴を知らせるチャイムがなった。

「行こっか」

本鈴まであと五分。

名残惜しいけど…

もう少しこのままでいたいけど…

義務教育の身だしね。

三人で手を取り合い、教室に向かった。