甘く低い声は、あたしの心に響いた。 まだ名前しか知らないけど、会ったばっかだけど… 誓と全然違うタイプだけど、不良だけど… あたしは〝春野カナタ〟に惹かれた。 「あ、そだ。俺のこと〝カナタ〟っつって」 カナタか……。 「わかった?…竣………」 〝竣〟……。 カナタに〝竣〟って呼ばれても、悲しくはなかった。 それは誓を思い出さなかったからではない。 誓を思い出しても、辛くなかったから。 『…わかったよ』