我慢が出来なくなって。

熟れすぎの果実が。

枝から、落ちる。


強い衝撃に驚いて。

甘い液と果肉を。

撒き散らせば。

嫌でも魅惑的な香りが、辺りに漂い始める。


ほら、その香りに誘われて、もう誰かがやって来た。

這いつくばって、味わおう。

見ているだけじゃ、もったいない。

一口含めば、解るから。


「甘くて、美味しい。」

「一度食べたら、忘れられない。」

「・・・もう、ないの?」

「もっと、もっと食べたい・・・。」


物欲しそうに見上げれば。

色も形も様々の、たわわに実った果実たち。

羨望も、真実も、欲望も。

嫉妬も、反感も、嫌がらせも。


他人事なら、蜜の味。


ほら、また一つ。

熟れた果実が、落ちてきた。

みなで食べよう、噂好きの生き物たち。

<終>