「ミステリー・オカルト同好会なんて入っているんだから、少なからず謎の原因やら見方に際して意見の食い違いから言いあいになったことくらいあると思いますが、そこから新たな可能性を発見できたという経験は?」

ありますか? とまでは続けないが、霧島は祐介から順に夏希、そして先程から押し黙っている加藤悟を見てそう問いかける。
視線でも問われた夏希たちは気まずそうに目配せしながらも答えようとしない。予想するまでもないが、きっと経験は無かったのだろう。
ひやひやしながらその様子を傍観している千鶴に霧島の視線が移る。

「君は?」

「えっ、わ、私? その、えっと…ミステリーとかオカルトは関係ないけど、ゼミなんかの話し合いでこんな考え方もあるんだって思った事とかはある、かな…?」

そういうことじゃないだろう、と思いながら千鶴はしどろもどろに答える。
意外にも霧島はその答えでも十分だったらしく、「それと同じだ」と言った。

「え?」

「誰かと意見を交わすことで発見できるものがある。聞いていれば映画を見て満足しているだけなようだし、もっと深く突っ込んだ討論くらいすれば良いのにと思いたくもなる」

隠す気もないのか徐に溜息を吐く霧島を見て、千鶴はいつもの活動を思い出してみるが、確かにいつも夏希や悟のオススメだという映画やドラマを見て騒ぎ、そして霧島の言うところの“小学生でもできる”ような感想で談笑した後は解散、というものだった。
確かに、新たな可能性とやらを見つける様な話し合いを望んでいる霧島から見れば夏希たちがしている活動内容は、ままごとにしか見えないと言いたくなるのも頷ける。

霧島の話は終わっていなかったらしく、ところで、と千鶴に続ける。