真夏と二つ三つ言葉を交わした後、帰りの車の中で龍之介が唄に話しかける。


「なぁ、さっきの人って誰?」

「透さんの大切な人。」

「だから、透さんって誰なんだよ!?」


運転中の龍之介はずっと気になっていた事の真相を求め、唄に顔を向けた。


「ちょっと!!前見てよ!危ないでしょ!!」


唄はそんな龍之介に注意して、しゅんとしながらも前を向いたのを確認して答えた。


「私の初恋の人で、龍のこと知ってた。」

「ええっ!?まじでっ?」

「うん。…ふふ。」


驚く龍之介に昔を思い出して笑った唄。


「何で笑ってんだよっ!!」

「昔はさ、いつも図書館に来てくれてたんでしょ?それも入り口で行ったり来たり、入るのを躊躇ってたって!?」


「なっ////何故それをっ!!?」

「透さんが言ってた。」

「俺その人の事見たことねぇし…どうせ教えてくれねぇんだろ?」


運転しながら、ふてくされている龍之介を、横目でちらっと見て唄は言った。


「私の話、信じてくれる?」

「当たり前だろ。」


ハンドルを握る横顔は優しい笑顔を浮かべていた。


「あのね、17才の夏‥‥」