綺麗な青空、真っ白な入道雲。

暑い日差しに、輝く緑。

響く、蝉の声。




「さぁ、帰ろうか。」


唄は隣にいる龍之介を見上げて笑った。そんな言葉に頷いて、龍之介は唄の前に右手を差し出した。


「おー。気をつけて歩けよ、ここ道が悪い。」

「ありがと。」


差し出された手に唄が微笑んで自分の手を重ねた時、二つの足音が聞こえてきた。



「あれ?透の知り合い?!」


柄杓と水桶を持って現れた男の子が声をかけてきた。

どことなく見覚えのある顔をしている。唄が記憶の中で目の前の少年を捜していると、また見覚えのある人が顔を見せた。


「真透!お母さんを置いていくってどうゆう事‥‥唄ちゃん?」

「真夏さんっ。」


目の前に現れたのは数年前に一度会ったっきりの真夏だった。


「母さん!俺、掃除してるよ?」

「よろしく。」


真透はそう言うと少し先にあるお墓へと向かった。


「久しぶりね。結婚したの?」


唄の手を握る龍之介に軽く会釈をした後、命の宿ったお腹を見て、そう訪ねてきた真夏。


「はい。」


龍之介と目を合わせて答えた唄は、少し照れたように笑った。