あぁ、今日も蝉は忙しなく鳴いて…

貴方と聞くと心地よいのに、貴方の相手は私じゃダメなの。



「行きましょう!!まなさんに会いに!」


そう言って急に手を掴んだ私に、透さんは優しく笑ってくれた。


「‥‥はい。」


そして、そのまま私の手を握り返してくれた。



「まなさんってどんな人なんですか?」

「とても明るくて元気でした。“まなつ”と書いて“まな”真夏の太陽のように眩しい人です。」


「すてきな人なんですね。」


不思議と悲しい気持ちにはならなかった。

初めての恋がこんなに早く終わりを告げても…


あなたの笑顔が優しすぎて。

聞こえる蝉の声が心地よくて。




「唄っ!!」

「え?吉田?!…ごめん、今忙しいのっ!」

「おい‥‥お前っ…」


図書館を出た所で吉田に会ったけど、今はそれどころじゃない。

吉田の声はちゃんと耳に届いたけど、ごめんね…振り返る余裕はないの。