そして、兄貴は家を出た。

時計をみると7時30分。私もそろそろ鞄とか部屋に取りに行かないとなぁ。

「お母さん、そろそろ準備したほうがいぃんじゃないの?」

「あらっ、そうね。」

お母さんは席を立ち、準備をしにいった。


「…ごちそうさまでした。」

私は両手を合わせ呟いて、席を立ち自分の部屋へと向かった。

鞄にはお気に入りの水玉ペンケースに必要な書類が入っている。可愛いクマのキーホルダーをつければ、オリジナルの鞄の完成♪学校で、沢山の思い出を作りにいきたいなぁって思った。私は鞄を持ち、階段を降りるとお母さんがそわそわしてた。

「どうしたの?お母さん。」

「あっ瑠歌、お母さんの鞄知らない?見つからないのよ。」

「鞄?いつものとこにないの?」

「それがないのよ。どこにいったのかしら…」

お母さんはいつも物をなくしちゃう。だから大事な物とかは、いつもの場所、クローゼットの中に置いてる。それがないとすれば…やれやれって感じだ。

「お母さん、リビングは?いつもの場所にないときは、毎回リビングになかったっけぇ?」

私は呆れながら言った。毎回繰り返していたので、驚きもしない。

「あっそうかも!瑠歌、先に出てて。二人とも遅刻したら困るし。すぐ追い付くから。」

お母さんは腕時計をみてそう言った。時計は7時53分を指していた。

「分かった、じゃぁ先に行くね。お父さん!いってきまぁすっ!!」

私はリビングにいるお父さんに聞こえるよう大声で伝えた。

「おう、気をつけて!いってらっしゃいー!」

お父さんも大声で言った。

私は新しい革靴を履いて、玄関の扉を開けた。なんか自分が自分じゃないみたいに思えた。初めての高校の制服、新しい革靴、新しい鞄、なにもかもが清々しかった。

歩いていると、桜の木が満開で花が散っている。天気は晴天、雲一つなし、最高の日だ。

「友達たくさんできるといぃなぁ。…あれ?」

私は、辺りをキョロキョロしている男の子を見つけた。同じ高校の制服だったので同じ学校だとすぐわかった。困っている様子だったので声をかけた。

「あの、どうかしましたか?」