『・・・え・・・ううん、そんなはずない・・・』



「生きてるんだ。すまない、伝えたくても連絡手段が無くてな」



『パパの声・・・』



なんでだろう。
涙が勝手に溢れ出るんだ。



「桃夏・・・大丈夫、もういなくならないから。帰って来たんだ」



そう言ってパパは力強く桃夏をだきしめた。

この温もり、
この体温、
この人肌を、

10年間ずっと待っていたんだと言わんばかりの涙が流れる。


待ってたんだ、桃夏は。


死んだとわかっていても、心のどこかで1%にも満たない可能性を信じて待ち続けてたんだ、と桃夏は思った。



「詳しく話すよ。あんまり人がいない場所がいいよな?」



『桃夏のお家で話そう?』



「一人暮らしでもしてるのか?実家は確か少し田舎ぢゃ・・・」



『一人暮らししてるの。マネージャーさんが車で送ってくれるから行こう』



「マネージャー?・・・もしかして、桃夏にそっくりだと思ってたアリスって・・・」



『そう、桃夏だよ。』



「なんてこった・・・驚いたな」



パパ、桃夏であるアリスの曲聴いたことあるかな?
アリスの事、歌手としてどう思ってるかな?


でも、とりあえずこのビルから出ないと桃夏がアリスって事が他のお客にバレちゃうかもしれない。



『早く桃夏の家に行こう。聞きたいことが沢山ある』