帰ろうとする先輩を呼び止めた知くん。


「二度と───」

「桃夏ちゃんはどんな手を使ってでもいただくよ。」


知くんの言葉を遮って先輩は言った。

知くんの眉がピクリと動いて、顔をしかめるのがわかった。


暗く人通りも少ない道の街灯が桃夏達を薄気味悪いオレンジ色に照らす。


そして先輩は何事もなかったかのように、桃夏にVサインをして暗い夜道に消えて行った。



「………」

「………」


家までの道のり、知くんが桃夏に手を差し伸べる事はなく、2人の間には沈黙しかなかった。