知くんの声?
声のした方に顔を向けると、そこに立っていたのは確かに知くんだった。
薄暗い道だけど、知くんの姿はわかる。
「何って、キスして抱き合ってるだけだろ?」
いっ、今なんて?
キスって言ったよね?
キスなんてしてないっ!!
抱き合ってもないっ!!
先輩から一方的に抱きしめられてるだけっ!!
「俺の女に触れんな。」
「ふ~ん。人気歌手アリスの彼氏は人気モデル漣ってことか。なかなか面白れ~ぢゃん。」
「日本語通~じねぇの?」
「はい。これでいいんでしょ?」
強く握られていた桃夏の手首から先輩の手が離れた。
その瞬間、桃夏は知くんに向かって走った。
『知くんっ!!』
知くんに思いっきり抱きついたら、安心してきて涙が出てきた。
「桃夏ちゃん、バイバーイ。また俺ん家おいでね~?」
「おい、ちょっと待て。」