帰りたくないとか、抱きついたとか、一人にしないでとか……「歩が好きです」って言っているようなものだ。
全部酒のせいにしよう。
酒って恐ろしいけど、助かった。
「はぁ~。マジごめん。酔っ払ってました」
もう一度布団に潜り込むと、歩の匂いに包まれて胸がキュッとなった。
「響子さんには言うなよ」
「言う機会もないよ」
「春樹にもだぞ」
「言わないって。あたしだって恥ずかしいし」
寝そべった状態で部屋を見渡した。
六年ぶりに入った歩の部屋は、すっかり男の部屋だ。
あの頃と変わっていないのはベッドと机と本棚くらい。
おもちゃ箱もなくなっている。
改めて歩が男に見えてきた。
「歩も男なんだね」
「は? 何言ってんの、今更」
「わかんない。まだ酔ってんのかも」
私はそう言って顔まで布団をかぶった。