歩は起き上がって大きなあくびを一発かまし、ベッドを出た。

 ファンヒーターのスイッチを入れ、カーテンを開けて再びベッドへ戻ってきた。

「昨日な、お前バス停で寝ちゃったの」

「そこまでは覚えてる」

 歩は小さく笑って、記憶のない私の言動を説明してくれた――。



 気付けばお前ぐっすりでさ。

 風邪引くから帰るぞって起こしたら、眠いから寝るって駄々捏ねだして。

 それでも何とか家の前まで引っ張ってきたんだけど、今度は帰りたくないとか言い出したんだよ。

 で、まあ酒も飲んでることだし、おばさんたちにバレるのが嫌なのかなって思ってうちに連れてきたわけ。

 ほら、うちは兄貴も出て行ってるから結構自由だし。

 とりあえずおばさんに「うちにいるから」ってメールして、メールしてる間にお前は俺のベッド占領してて。

 俺は兄貴の部屋で寝ようとしたんだけど、お前が一人にすんなってまた駄々捏ねてこうなったんだよ。