酒なんて飲み慣れていない私は知らなかった。

 乗り物に揺られると、酔いが回るなんて。

 目がチカチカしてきたし、クラクラする。

「大丈夫か?」

 言葉にもできず、首を振って意思表示をする。

 フラフラしている私を、歩はしっかり腕で支えてくれた。



「降りるぞ」

 歩の声で目を覚ます。

 いつの間にか全体重を歩に預けて、眠ってしまっていたのだ。

 歩に手を引かれてゆっくりバスを降りた。

 彼にとっては迷惑な女だと思う。

 でも、私は幸せだ。

 彼と触れ合えるなら、何度でもいくらでも飲みたい。

「座れ。少し休もう」

 バス停のベンチに座らされ、繋いでいた手が離れた。

 冬の風がひやっと沁みる。

 歩の手が名残惜しい。