「恵里ぃ」

 悠晴がうわ言のように私の名前を呼んだ。

「なに?」

「一緒に帰ろうー」

 春樹の腕を逃れて私に抱きついてきた。

 酒臭い……。

「ヒュ~」

 後ろで三人が冷やかす。

「方向が逆でしょ?」

「こら、悠。女に送らせようとすんなよ、ダセぇな」

 春樹君が悠晴を引き剥がす。

 ごめんな、と悠晴と肩を組んだ時、彼の顔色が変わった。

 視線は私の後ろにあるようだ。

「姉ちゃん……」

 振り返ると、そこには腕を組んで歩く響子さん……と歩の姿。

「春樹?」

 響子さんの声がして、二人は私たち一行の前で止まった。

 ふと歩と目が合って、私からすぐに目を逸らした。

 こんなところで会うなんて……。