気にしないでと言おうとした時、春樹君は思い当たるような顔をして言った。

「ねえ、その幼馴染って同い年?」

「そうだけど」

「南高?」

「うん。ていうか何でわかるの?」

 春樹君は声を上げて笑い出した。

「うわ、世間って狭いな」

「ちょっと待ってよ。わかんないよ」

 彼と響子さんの繋がりを、色々想像してみる。

 その場では思いつかなかったが、私はすっかり忘れていた。

 彼の、苗字を……。

「俺、伊藤っていうんだけど。恵里ちゃんが言ってるのって、俺の姉貴じゃねえ?」

「え、うそ。響子さんの弟?」

「うそ、はこっちのセリフだよ。まさか姉貴の知り合いがいるなんて」

 それから私は、歌そっちのけで響子さんと知り合った経緯を説明した。

 春樹君も何度か歩と顔を合わせたことがあるそうだ。

 ほんと、世間は狭い。