「繰り返してんだよ。覚えるまで何度も。つーか踏むなよ、俺の服」

 足に敷いていたジャケットをグイっと引っ張り出された。

 話は続く。

「頭使って、勉強モードにして。そうしてたら新しく覚えるものも入りやすくなる」

「勉強モードにできないもん」

「それは才能かもな」

「歩、なんでそんなに勉強が好きなの?」

 歩はハハっと笑い、こちらを向いた。

「勉強が好きなわけないだろ」

「うそ」

「嘘じゃねーよ。出来れば遊んでいたいし、こんな面倒なことやりたくないけど」

 しょっちゅう机に向かってんじゃん、と言おうとしてやめた。

 言ったらたまに窓から覗いていることがバレてしまうから。

 その代わりに、ふーんと言いながら起き上がり、話題を変えた。

「今日、響子さんが学校に来た」

 歩の表情が変わる。

「は?」